diagnosis 診療案内
お知らせ
循環器(心臓病)専門医による特別診療
月に2回循環器専門医による特別診療を行っております。完全予約制になりますので電話にてお問い合わせください。
- 岩永 孝治
- 獣医師、医学博士、循環器科、日本獣医循環器学会認定医
所属学会:日本循環器学会、日本獣医循環器学会
- 2001年
- 日本大学農獣医学部獣医学科卒業
- 2003年
- 日本大学生物資源科学部付属動物病院研修医過程を修了
- 2003年
- 千葉大学大学院医学研究院循環病態医科学に入局
- 2007年
-
千葉大学大学院医学研究院にて医学博士取得
日本獣医循環器学会認定医取得
動物の循環器診断サービス設立
- 2010年
- 東京動物心臓病センター 開院
医学分野でも獣医学分野でも循環器疾患について優れた研究業績があり、同時に小動物循環器診療に熱い思いを抱いている。
現在毎日のように多くの動物病院で、心臓超音波検査を中心に講演や専門診療を行い、正しいエビデンスに基づいた新しい循環器診療を築こうとしている。
循環器科
僧房弁閉鎖不全症と三尖弁閉鎖不全症の犬
本日は心臓が悪いために咳と呼吸困難なキャバリアのワンちゃんをご紹介します。
主訴は咳と呼吸が苦しいとので来院されました。元気食欲も低下していました。
X線検査と心臓の超音波検査の結果から、僧房弁閉鎖不全症と三尖弁閉鎖不全症があるのが確認されました。
僧房弁は左心房と左心室の間にある弁で三尖弁は右心房と右心室の間にある弁で、老年期に後天的に発生する弁の異常により起こる疾病です。マルチーズやポメラニアンといった小型犬で発生が多いですが、キャバリアでの発生も多い疾病です。
この患者さんに対しては血管拡張薬と利尿薬を2種類使用して症状を落ち着かせていますが、中にはそれだけでは症状が抑えられないために他の血管拡張薬や心臓の収縮力を高める薬なども使用する場合があります。
また、治療をしない期間が長いほど、症状が重度になっているワンちゃんが多いです。
何か思い当たる呼吸の違和感や咳をするのを見かけたときは早く診察することをお勧めします。
フィラリア予防
これはフィラリアの成虫です。
フィラリアは蚊が媒介してワンちゃんの肺動脈や心臓に寄生する寄生虫で、気付かずに放置してしまうと成虫が血流を阻害してしまい最悪の場合死に至ります。
しかし、きちんと薬を飲んで予防すれば防げる病気なので蚊が多くなるこれからの季節、予防薬の与え忘れなどがないように注意してください。
肺炎?肺水腫?
現在酸素室で集中治療をしているわんちゃんがいます。
呼吸が荒く様子がおかしいとの事で来院され、炎症のマーカーが高値でした。
心雑音もあったため胸部のレントゲン撮影をすると…
本来正常な子の胸部レントゲン画像は下のようになります。
胸の中が真っ白で何が何だかわからなくなっています。
こんな時に考えるのは、肺に炎症がないか?水が溜まってないか?腫瘍がないか?心臓病はないか?
白いだけでも様々な原因があり、それに応じて治療法も大きく変わってきます。
この症例は追加の精密検査を行い、肺炎もしくは肺水腫と診断し、酸素室で集中治療、抗生剤、気管支拡張薬、利尿剤や血圧降下剤などを併用し積極的な治療を行っているところです。
呼吸が荒い時は緊急的なこともあります。ご注意ください。
この咳はどこから
5日前に13歳のワンちゃんが来院されました。
「 少しずつ良くなっていますが3日前から明け方に咳をしています」
身体検査をしました。
- 一般状態に異常ありません。
- ノドを軽く触ると少し咳き込みます。
聴診をしました。
- 呼吸の音に大きな異常はありません。
- 心音に雑音が聴こえました(収縮期雑音)
胸部レントゲン検査を行いました。
- 心臓が少し大きいです。
- 肺の後ろの方が少し白っぽいです。
2日前に画像診断の先生にレントゲンを見て頂きました。
- 心臓が大きい。
- 心臓へ戻る血管(後大静脈)が太い。
- 右心系に負担がかかっている可能性あり。
- 肺の陰影が白っぽいが心臓病の時とパターンが違う。
- 過去のレントゲンにも同様の所見があるのでアレルギー性の気管支炎の可能性もあり。
本日、循環器専門医の先生の診察を受けて頂きました。
咳は抗生剤の内服を開始してすぐに治まっているそうです。
心エコー検査の結果は僧房弁閉鎖不全症でした。
治療開始すべきレベルになっているそうです。
循環器の先生もレントゲン写真から動脈管開存症を考えられたそうですが、 こちらは問題ありませんでした。
もう少し抗生剤の治療をしたのちに 心臓病の治療開始予定です。
僧房弁閉鎖不全症
本日は、心臓専門医による特別診療日です。
その中の、症例の1つを紹介致します。
心臓病の診察をしていると、他の心臓病に比べて一番出会う病気が僧房弁閉鎖不全症です。
心臓の左心房と左心室の間にある僧帽弁という弁の異常で,老年期に後天的に発生する。
犬の心臓病では最も多いものである.とくにマルチーズ,ポメラニアン,ヨークシャーテリアといった小型犬に多く,発生は年齢とともに増加し16歳になると75%がこの病気を持つと言われています.ただし、キャバリアは1歳ですでに33%がこの病気を持っていると言われています。
弁や弁を動かすための構造が変性を起こし,しっかりと弁がしまらなくなるために,左心室が収縮して全身に血液を送り出すときに,左心房の方に血液が逆流してしまいます。
この時点で疲れやすいなどの症状がでて、左心室からの血液の逆流の影響で左心房は肥大します.
症状で一番目立つ咳は,左心房の肥大で左側の気管支が圧迫されることにより起こります.
さらに左心房に流れ込む肺からの血管にも影響が及び,それが肺に影響を及ぼし,肺水腫や右心系の異常も起こります.
右心系の異常が起こると,今度は心臓に戻る血液の欝滞が起こり,胸水や腹水がたまるようになる.
胸部のレントゲンや心臓の超音波検査などで診断をつけます。
胸部のレントゲンで、心臓がどのくらい大きくなっていて、心臓に負担がかかっていないかどうか、その前に書いたように肺に水が溜まる肺水腫になっていないかどうかを確認し、超音波検査にてどの程度心臓に負担がかかり、逆流をしているか、数字で算出します。
治療としては、血管を拡張させる薬,心臓の収縮を高める薬,利尿効果を高めて体の中の余分な水分を減少させる薬で心臓の負担を軽減します。もしくは、外科的に心臓の手術を行うケースもあります。