ならしの動物医療センター

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report 症例報告

潜在精巣(陰睾)

2020.06.03

今回の症例は、潜在精巣の摘出手術をした5カ月のトイプードルです。

正常な場合、精巣は胎生期に腎臓直下に形成され、イヌでは生後約30日以降、ネコでは生後約20日で陰嚢内に下降します。

潜在精巣はイヌに多い疾患で、両側または片側の精巣が陰嚢内に下降せず腹腔内や鼠径部に停留します。

この疾患は遺伝疾患と考えられており、陰嚢内に下降しなかった精巣では精子が形成されません。

ネコでは腫瘍化することは稀ですが、イヌでは潜在精巣は中年齢以降に腫瘍化することが多いため中年齢になるまでに精巣摘出手術をうけることが推奨されています。

また、一般的に高齢になると麻酔をかけることによるリスクは高くなるため、潜在精巣の場合は腫瘍化の予防のためになるべく麻酔リスクの少ない若齢のうちに精巣摘出手術をうけることをおすすめしています。

今回の症例は5カ月と若齢だったため、腫瘍化の予防と避妊のために精巣摘出手術を実施しました。

術後の経過は順調で手術の日の夜には元気に動き回っていました。

獣医師 後藤

生後5カ月ですが精巣が陰嚢に下降してきていません

腹腔内に停留していた精巣を摘出しました

縫合を終えたところです