ならしの動物医療センター

ならしの動物医療センター

report 症例報告

環椎軸椎亜脱臼

2017.12.22

頸椎のうち第一頚椎を環椎、第二頚椎を軸椎といいます。
通常、脊椎と脊椎は椎間板が間に挟まってクッションの役目を果たしていますが、
この2つの頸椎間には椎間板が存在しておらず、4つの靭帯によって支えられています。


生まれつき、あるいは外傷などによってこれらの靭帯の形成に異常が起こると
この2つの椎体が亜脱臼を起こし、脊髄が圧迫を受けます。



犬の環椎軸椎亜脱臼は大半が生まれつきの靭帯形成異常によるものであり、
半数以上が1歳未満に初期症状を示します。

中には成犬になってからちょっとした怪我や激しい遊びなどによって症状を起こし始める事もあります。

患者の大多数がチワワ、ポメラニアン、ヨークシャーテリア、ダックスフント、
マルチーズなどの小型犬種ですが、中型犬以上でも認められる事があります。



患者は頭部を動かすと激しい痛みを感じキャン!と鳴くことがあったり、頭を触られることを嫌がります。
また、骨と骨が不安定なので些細な運動や衝撃で急激な症状の悪化がみられる事があります。

症状が進むと起立不能となり、四肢だけでなく呼吸をする筋肉に麻痺が出ると
呼吸困難になって生命に関わる事態となります。


本症の疑いがある患者の診断には頸椎のレントゲン検査および造影CT、MRI検査が必要です。


診断後、治療を行いますが、症状が軽度であったり若い動物の場合には場合によって
安静と首のコルセットを数週間装着する事で症状に改善が見られる事があります。


しかし、ちょっとした運動などで再発あるいは悪化する事が懸念されます。
そういった場合、手術によってこの2つの頸椎を固定する方法があります。
手術は骨に特殊なピンを数本挿入して骨セメントで固める方法です。


術後は骨同士が癒合するまでの間(一般的には6-8週間)自宅にて安静が必要です。