ならしの動物医療センター

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report 症例報告

前十字靭帯断裂

2020.01.03

本日は、前十字靭帯断裂の症例について書かせて頂きます。

前十字靭帯断裂は犬の膝関節疾患の中でも代表的な疾患のひとつで、小型犬から大型犬まであらゆる大きさの犬種で報告されています。

前十字靭帯は膝関節内で大腿骨と脛骨を結ぶ太い靭帯で、大腿骨に対して脛骨が前に飛び出ないよう制限する重要な役割を果たします。

主訴は、椅子から飛び降りた後から、右後肢を挙上し、地面に肢をつきたがらないとの事でした。

診察台の上でも、右後肢を地面につけない状態です。

元々、膝蓋骨脱臼が認められるワンちゃんで、右後肢の触診を実施。

十字靭帯を断裂している可能性も疑い、脛骨の前方引き出し徴候(Cranial Drawer Sign)を確認したところ、陽性。

レントゲン検査でも前十字靭帯断裂を疑うような所見でした。

 

 

飼い主様とご相談し、関節外固定法という手術法で、外科手術を行い治療することになりました。

 

 

 

 

 

この写真は、膝の関節をあけて、関節液の状態や靭帯の損傷具合や半月板の損傷など確認しております。

この時の関節液は、採取し細菌培養検査に提出しましたが、細菌感染は陰性でした。

 

 

 

 

 

 

外側腓腹筋種子骨という大腿の裏側外側にある小さな骨の裏を回すように、糸を通します。

その後、脛骨稜という膝の下の脛の骨が突き出た部分に穴を開けて、脛骨稜の穴と外側腓腹筋種子骨とを支点にして糸で関節を締め上げて固定します。

 

 

 

現在経過は良好で、安静の状態は続いておりますが、右後肢も地面について歩いてくれています。

獣医師 田中