ならしの動物医療センター

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report 症例報告

変性性脊髄症 Degenerative Myelopathy(DM)

2020.02.24

変性性脊髄症 Degenerative Myelopathy(DM)は痛みを伴わず、ゆっくりと麻痺の進む脊髄の病気です。

日本ではウエルシュコーギーでの発生が多く報告されていますが全ての犬種で起こり得ます。

キャバリアのハナちゃんは4年前に後ろ足から症状がでました。

神経の専門病院をご紹介し診察を受けていただきました。

日本ではコーギー以外の犬種の遺伝子診断が可能ではなかったため海外の検査センターを利用しDMと診断されました。

いまだ確立した治療法はなく理学療法にて筋肉の衰えを防ぐことが進行を遅らせると言われています。

慢性の外耳炎を患っているハナちゃんは定期的にお耳の治療に通院していました。

ハナちゃんは車イスで来院するようになりました。

素敵な車イスで元気に待合室を走っていました。

しかしDMは徐々に進行します。

前足に症状の出始めたハナちゃんは段々自力で車いすを動かすことが出来なくなってきましたが

お父さん、お母さんに補助してもらい散歩に出ていたそうです。

前足で身体を支えれなくなったハナちゃんは台車に乗せられて通院するようになりました。

台車でのお散歩も大好きでした。

前足もほとんど動かなくなり伏せの姿勢も取れなくなりましたが元気に通院してくれました。

でもお耳の治療は苦手で頭をブルブル振っていました。

動けなくても食欲は旺盛だったそうです。

そのハナちゃんも徐々に食欲が落ち始めとうとうほとんど食べられなくなりました。

脱水を防ぐため皮下補液をすることになりましたが

このころのハナちゃんは、お顔の表情も動かなくなってしまいました。

 

その日の朝、ハナちゃんは頭を持ち上げお顔にも表情が戻っていたそうです。

快復をご家族で喜んだそうですが、その数十分後に息をひきとりました。

 

進行が首まで来ると呼吸に障害がでるとされていますが

幸いハナちゃんには呼吸障害は最後まで強く出ることはありませんでした。

ぎりぎりまで食欲もありました。

オムツをしていましたがとても清潔に介護をされていました。

 

いまだ不治の病気ではありますがそれでも発症後数年間は

そして重症化してもかなりの長期間ご家族と幸せに暮らせる病気であることを

ハナちゃんとご家族に教えて頂きました。

 

ご冥福をお祈りいたします