高カルシウム血症
2017.12.22
本日の症例はカルシウムの値が高いワンちゃんです。 春の健康診断で軽度のカルシウムの高値が見つかり、 症状が見られなかったため定期的に検査を行いました。 次第に、症状がでてくるような値にまでカルシウムが上がってきたため 詳しく検査を行うことになりました。 まずはレントゲン検査や超音波検査をおこない、 高カルシウムを起こす病気がないか調べました。 高カルシウム血症になる病気として、原発性上皮小体機能亢進症、 ビタミンD中毒、アジソン病(副腎皮質機能低下症)、腎不全、多発性骨肉腫、 悪性高カルシウム血症(悪性腫瘍など)などが挙げられます。 検査の中で、アジソン病や腫瘍、腎不全が除外されたため、上皮小体機能亢進症が疑われました。 さらにCT検査を行ったところ、上皮小体と思われる場所に病変が認められました。 上皮小体では、ホルモンの一種であるパラソルモンが分泌されています。 パラソルモンは、体中のカルシウム濃度をコントロールする役割を担っており、 パラソルモンの分泌が異常に増えてしまう症状を、上皮小体機能亢進症といいます。 上皮小体機能亢進症は、原発性、腎性、栄養性の3種類に分類できます。 原発性の原因は、上皮小体自身の巨大化(過形成)です。 犬の上皮小体機能亢進症の多くが、この原発性と言われています。 腎性と栄養性は二次性上皮小体機能亢進症と言われており、 栄養性はホームメイド食によるもの、腎性は腎不全の進行にともない腸管からの カルシウムの吸収が減少することで起きます。 検査から二次性の上皮小体機能亢進症が除外されたため、原発性上皮小体機能亢進症と診断しました。 今回、健康診断で偶然見つかった高カルシウムでしたが、健康診断後の再検査を行うことで 診断に結び付けることができました。 一年に一度、健康診断を行うことの大切さがとてもわかる症例でした。